第 151 回 PTT のお知らせ

今月の PTT のお知らせです.春分の日の前日で,場所は,久しぶりに農工 大です.


日時: 1990年 3月 20日 (火) 18:30 (水曜日ではありませんので御注意下さい)

場所:東京農工大学 数理情報工学科 1階 1-E教室 中央線東小金井駅南口よ り南西へ徒歩約 10分.


話題: 文書作成システム「浄書」

話者: 鈴木未来子(農工大) ほか

内容:

本発表では,文章,図,表,グラフ,数式,プログラムリストなどを含む 論文,資料,ソフトウェア関連文書などを対象とした総合的な日本語文書清書 システム「浄書」について発表する.特に,多彩な文書レイアウトを可能とす る日本語フォーマッタ「浄書参」,および,図形作成言語「画匠」で記述した 図形の出力処理方式を中心にして述べる.我々は,浄書をソフトウェア開発の 重要なツールであると考えている.


食事: 17:30までに,0423-81-4221 内線 286 まで.


次々回: 1990 年 4月 18日 (水) 早大 (予定)

葉書の残りは 枚です

差出人、幹事:
113 文京区本郷 7-3-1
東京大学工学部計数工学科  岩崎英哉
03-812-2111  ext. 7411
iwasaki@wadalab.t.u-tokyo.ac.jp
3月のPTTの報告です. 岩崎英哉 東京大学工学部計数工学科
第 151 回 PTT 報告
日時: 1990年 3月 20日 (火)
場所: 農工大数理情報工学科 1-E
話題: 文書作成システム「浄書」
話者: 鈴木未来子 (農工大)
出席者: 小川 貴英, 鈴木 悦子(津田塾大), 川平 吉樹(電通大), 岩崎 英哉(東大), 伊知地 宏, 佐口 泰之(富士ゼロックス), 石畑 清(明大), 高橋 延匡, 中川 正樹, 並木 美太郎, 狩野 敦, 横関 隆, 森田 雅夫, 小松 徹, 池尻 宏(農工大)
あらまし:

  我々は,大学の研究室などの環境を前提とし,論文,ソフトウェアに関する
文書に至る総合的な日本語文書清書機能をもつ,インテリジェントプリントサ
ーバ「浄書」の開発を行なっている.「浄書」は,LBPに清書機能や文書交換機
能を持たせることにより,パソコンやワープロの清書マシンとして利用可能と
なっている.そして,実際に,LBPを利用するホスト計算機側の負担軽減や,
分散した文書作成環境を実現している.

  現在,浄書第2版には,和欧混合組版処理の機能をもつバッチ処理型の日本
語文書フォーマッタ(第2版)を軸とし,英文フォーマッタ,リスト出力ツール,
ワープロ文書清書ツールなどの様々な出力処理用ソフトウェアを用意している.
しかし,浄書第2版では,ツールの増加にともなうツールの管理の不備,印刷
物の再現性の低下などの問題が生じた.また,日本語文書フォーマッタの出力
処理に,図表,プログラムをはじめとする様々な文書要素の出力処理を自由に,
容易に組み込みたいという要求が出てきた.

  そこで,ソフトウェアモデルを新たにした「浄書第3版」を構築した.浄書
第3版では,複数の出力処理系を使って,ひとつの紙面を作成するビルディン
グブロック方式を採用した.そして,各展開処理系の起動や各展開処理系に渡
すデータの管理,各処理系が展開する領域 (これを「箱」と呼ぶ)のレイアウ
ティング処理などを行う管理部(「浄書参」)が中心となり,文書出力処理を行っ
ていく.また,箱の絶対的な位置や向きを各展開処理系に意識させないように
するために,箱の仮想化処理をOS側に組み入れている.そのため,展開処理系
を浄書の"部品"として作成することが可能となり,構築や保守がしやすくなっ
た.

  また,今回,浄書第3版の文書要素のひとつとして,図形の展開処理系を実
現した.浄書では,WYSIWYG方式で作成する図形以外にも,科学技術論文を作
成する場合に使われる図形(例えば,フーリエ級数展開の図,3次元透視図など)
も出力処理の対象としている.そして,それらの図を文章とともにソーステキ
スト中に記述できるように,図形作成言語「画匠」を開発し,その処理を実現
した.「画匠」は,我々がシステム記述言語として採用している言語Cを基底
とする言語であり,図形を関数定義していくという仕様である.「画匠」で記
述した図形プログラムの処理は,出力処理を始める前に,ソーステキスト中に
埋め込まれた画匠プログラムをあらかじめ言語Cコンパイラ(CAT)でコンパイル
し,実行形式ファイル,つまり,図形の展開処理を作成しておく.そして,
「浄書参」によりその展開処理系が起動されると,与えられた箱の中に図形を
展開するという仕組みである.

  今回の発表では,浄書参の箱処理,起動される処理系,処理全体のスピード
などに関する質疑応答の他に,プリントサーバ「浄書」を開発して得られた問
題,具体的にはプリンタ側のもつCPUのアーキテクチャやメモリ,フォントな
どの問題にも触れた.また,印刷の機能としてOSに組み込むべきライブラリに
ついてのご意見もいただけて,大変有意義であった.