第 154 回 PTT のお知らせ


日時: 1990年6月13日(水)

場所: 電気通信大学情報工学科計算機棟

話題: 実作業におけるユーザの振舞いに対する打鍵レベルでの分析と考察

話者: 粕川正充(東工大)、赤池英夫、角田博保(電通大)

出席者:
寺田 恵理子, 本宮 志江 (農工大), 鈴木 悦子, 小川 貴英 (津田塾大), 木村 泉, 粕川 正充 (東工大), 新田 泉, 長橋 賢児, 岩崎 英哉 (東大), 伊知地 宏, 佐口 泰之(富士ゼロックス), 多田 好克, 寺田 実, 武内 和昭, 森山 茂男, 河崎 宣史, 鈴木 貢, 赤池 英夫, 角田 博保(電通大)

概要:

ユーザの振舞い(どの時刻に何をした)を打鍵レベルで計測する機構を利用 して、実作業におけるユーザの振舞いを計測し、分析する試みを始めている。 その紹介をした。

まず、はじめに、X Windowに組み込んだ計測機構について説明した。X Windowのサーバー(X Server)内のWriteEventsToClientという手続きでイベ ントをクライアントプロセスに送っているので、その直前でgettimeofdayをし てイベントとともに時刻をファイルに記録するようにした。これで、各イベン トが発生する時刻が計測できる。対象機械はSun3/60(X11R3)であり、タイマー 精度は20msだと書かれている。ところが実際に計測した時刻を調べてみると、 どうも精度が60 msしか出ていない。gettimeofdayなどとするとプロセスが切 り替わるので、精度が悪くなるのではないかと思える。そこで、SunOS4.xから 導入されたストリームを使って時刻付きストリームを作ってやれば(ストリー ムはカーネル内で動くので)うまくいくんではないかと考え、ストリーム化し てみた。結果は同じ、60 msの精度であった。その昔Sun3/50(X10R4)で実験し たときは20msの精度が得られていたことを考えると、さあ何が原因かよくわか らない。しかたないので、デバイスドライバに手をいれるか、パソコンをつな いでそちらで計時する方法をとろうというつもりである。

つぎに、MS-DOSでのワープロソフト利用時の打鍵時間データの分析につい て話した。打鍵データとはいつどのキーが打たれたかを記録したものである。 この打鍵時刻列を構造をつけずに扱うとまずいことがおこる。たとえば、平均 打鍵時間を求めるのに全打鍵時間の合計を打鍵数で割ったのでは駄目である。 打鍵データにはコーヒーブレークや電話の応対なども含まれて記録されている からである。そこで、こういう休み時間を取り除き、ただひたすら切れ目なく 打鍵してる部分(連と呼ぶ)を打鍵データから取り出す手順を考案した。そし て、この連単位で打鍵データを解析することにした。ワープロソフト利用時の 実作業数10時間分を解析し、打鍵作業を特徴づけるいくつかのグラフを作成し、 提示した。グラフは、頻度を表すものと時系列を表すものの2通りに分かれる。 たとえば、平均打鍵時間のグラフなら、全打鍵における平均打鍵時間の頻度分 布(X軸が10ms単位での平均打鍵時間、Y軸が頻度)が前者、作業が経過してい くにしたがって平均打鍵時間がどう変わっていくかを表す経時グラフが後者に あたる。

さらに、X Window上で計測したデータについても解析した結果を示した。 前出のように精度がとれないので、1日に何打鍵打って何時間作業をしている かといった、ほとんど役に立たない例しか示せなかった。

最後に、続けて高速に打てる打鍵列を自動抽出した例を示した。たとえば、 ramという打鍵列はrに引き続いて a, m が独立に打たれる場合より3倍位速く 打たれているという結果がでている。より精密に分析するつもりである。


次々回:

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