第 221 回 PTT のお知らせ


日時: 1996年 7月18日 (木) 18:30 から
場所: 電気通信大学情報工学科 西9号館 AVホール(3階)
新宿駅より京王線,調布駅(特急で2つ目,15分) 北口
下車,北西方向徒歩15分,電気通信大学西地区キャン
パスの南西端にある白い建物; 甲州街道(国道20号線)
下石原交差点の北20メートルに西門あり.

話者: 中村 嘉志 (電気通信大学 大学院情報システム学研究科)
題目: ATM でワークステーションをつなげて DSM を作ってみる話
概要:
 ATM は Asynchronous Transfer Mode の略で、次期広帯域 ISDN を実
現する伝送方式です。日本語では非同期転送モードと訳されています。
話者は、この ATM をワークステーションのネットワーク接続に利用し
てワークステーションクラスタを構成し、そこに DSM (Distributed
Shared Memory : 分散共有メモリ) を構築することを考えています。
 今回の PTT ではその手法について、ネットワーク接続形態や一貫性
プロトコルなど、現在実装中のシステムの戦略をお話したいと思います。
なお、お話は以下の内容を予定しています。

・ATM の歴史と技術的概要
・ワークステーション上で ATM を利用するときの問題点
・DSM を構築する上での ATM にまつわる問題点
・問題に対する話者の解法
・システムの現在の実装状況について

食事:
今回もありません。調布駅近辺のハンバー
ガー、ドーナッツ、その他をご利用くださ
い。電通大の正門のすぐ西にもMで始まる
ハンバーガー屋が待っています。

次々回: 

葉書の残りは   ?? 枚です

第 221 回 PTTメモ


日時: 1996年7月18日(木) 18:30〜
場所: 電気通信大学情報工学科 西9号館 AVホール(3階)
題目: ATM でワークステーションをつなげて DSM を作ってみる話
話者: 中村 嘉志(電通大 情報システム学研究科)
出席者: 角田博保, 小林克志, 多田好克, 小口和広, 齊藤正信, 赤池英夫(電通大), 伊知地宏, 尾河裕, 中村一太(富士ゼロックス), 北折潤(電子航法研究所), 石畑清(明大), 田中哲朗(東大)
質疑応答:
  一部では ATM(Asynchronous Transfer Mode) とよばれるネットワークがお
お流行りである。分野によっては ATM モテモテという感も否めない。本来、
この ATM は WAN の技術として開発されたが、近頃では LAN としても利用可
能である。また、この ATM の特長の一つとして、高速・広帯域であるという
ことが挙げられる。
 という背景を基に、話者は ATM でワークステーションをつなげて
DSM(Distributed Shared Memory: 分散共有メモリ)を作ってみようと考えた。
そのそもそもの動機には、ATM の特長を活かして距離の壁を越えたいと言う欲
もあった。かくて話者は DSM over ATM の構築を目指すのである。
  ところが、ATM をワークステーションクラスタのような分散システムに当て
はめてみると、様々な障害が浮き彫りになってきた。特に、ATM はコネクショ
ン指向であるという性質から、直接的な手法ではその数が爆発してしまうとい
う問題が大きく立ちはだかった。
  そこで話者はこの問題に対してリング型のトポロジで対処しようと考えた。
リング型のトポロジでは、メッセージを巡回させることにより本来 ATM では
容易に行なうことができないブロードキャストができるばかりか、何よりも必
要なコネクションの数がワークステーション 1 台あたり 2 本、全体で N で
済むという利点がある。
  しかし、ATM が ATM たるゆえんであるその非同期性から、メッセージの順
序の保証ができない。これをそのままブロードキャストとして DSM の機能に
組み込むと、結局メモリ内容の矛盾化が起きてしまい、一貫性保てなくなって
しまう。そこで、話者は一貫性プロトコルに細工をし、キャッシュに対してオ
リジナルとコピーの属性を付けるようにした。そして、書き込み時において、
要求メッセージをそのオリジナルを持つノードに先に届けたものがアクセス権
を得るという仕組みの導入を考えた。
  また、メッセージのフォワードの高速化を実現するために、FORE 社の 
SBA-200 を利用する。こいつにはボード上に i960 が載っており、このプロセッ
サを利用して一貫性制御をこいつに任せることを企んでいる。こうすることに
より、ホスト側へのデータ転送、ホストへの割込みを軽減することができ、メッ
セージのフォワードにおいてリーズナブルな処理速度を実現できることを示唆
した。

  以上は話題の大筋ですが、当日はこれらについて図などを交えて詳しく説明
させていただきました。

質  疑:

  リング状のネットワークでは, 通信のスループットやレイテンシが一番遅い
部分に支配されるので, ローカルな結合とグローバルな結合を組み合わせて使
うのに適していないのではないかという議論がありました. 

  他に, ローカルな結合に関しては 100 Base-TX とか FDDI との比較をして
ほしいという意見がありました.

東京大学工学部計数工学科武市研究室 田中哲朗