第 230 回 PTT のお知らせ


日時: 1997年6月19日(木) 18:30から
場所: 東京農工大学 工学部 7号棟1E室
JR中央線東小金井駅下車 南口から徒歩8分
地図は,
Tuat Map 
よりたどることができます.

話者1:加藤直樹,斎藤文彦,中川正樹
題目: 手書きコミュニケーション
概要:
  手書きuiを利用したコミュニケーションソフトウェアとして,手書き電子メー
ル環境とリアルタイム手書きコミュニケーションシステムについて発表する.

手書き電子メール環境は,手書きのメッセージを e-mail で送受信することが
できる.手書きのデータはドローデータとして扱い,筆順や筆記者,筆記時刻
を記録することができる.リアルタイム手書きコミュニケーションシステムは,
インターネットを通じて,手書きのメッセージをリアルタイムに送受信するこ
とができる.対話者の識別が容易にできるインタフェースを考案し,実装した.


話者2: 堀場一弘,小國健,中川正樹
題目2: アイディアボード
概要:
70インチの対話型電子白板システムと電子ペンを用いて,複数人におけるグルー
プワークや教育支援を目的としたアプリケーションについて発表する.このシ
ステムでは、大画面に適したインタフェースを考案し、手書き認識によるC言
語プログラミングや四則演算ツール、子ども向けのゲームやWebブラウザなど
を実装した.

食事:


第 230 回 PTTメモ


日時: 1997年 6月19日 (木) 18:30 から
場所: 東京農工大学 工学部 7号棟1E室
題目1: 手書き電子メール環境
話者1: 加藤直樹,中川正樹
題目2:
話者2:
出席者: 角田博保, 中山泰一, 海江田章裕, 稲森淳, 齊藤正伸, 杉本路子, 米津篤史, 山田雄一郎, 村山慎也, 小口和弘, 村松寛文(電通大), 志築文太郎(東工大), 佐口泰之, 伊知地宏(富士ゼロックス), 寺田実, 海田美香, 山田勘二, 丸山一貴, 田中哲朗(東大), 岩崎英哉, 横田大輔, 加藤泰志, 橋本裕, 森永智之, 佐藤元信, 高橋了成, 早川栄一, 中島一彰, 永崎健, 中川正樹, 柳田正, 小國健, 堀場一弘, 斎藤文彦,加藤直樹(農工大), 立山義祐(NEDO), 清水剛(富士通研)
質疑応答1:

手書き電子メール環境は,インターネット上の電子メール(e-mail)で,手 書きのメッセージを送受信(読み書き)するための環境である.本報告では, 手書き電子メール環境の概要と,手書きメッセージを表現するためのフォーマッ ト HandsDraw の紹介,および,手書き電子メールの評価について述べた.

既存の電子メールには, といった問題点がある.これまで電子メールを使っている人にとっても,これ から電子メールを使うようになる人にとっても,これらの問題点を解決するこ とは重要である.

我々は,この問題を解決するために,電子メールに手書きインタフェースを 適用することを考えた.それが,手書き電子メール環境である.手書き電子メールは, といった特徴を持ち,先の電子メールの問題点を解決することができる.また, これらの特徴から,視覚障害者のコミュニケーションツールとしてもよいとの 意見が得られている.

もちろん,既存の電子メールとの親和性も考慮しており,既存の電子メー ルを受け取り,そこに手書きメッセージを上書きしたり,既存のメーラで手書 き電子メールを受け取り,ビューワに渡すことも可能である.

手書きのパタンや文字や図形を表現するためのインクフォーマットは,独 自に設計したHandsDraw を用いている.この HandsDraw は,手書き電子メー ルだけのためではなく,あらゆる手書きアプリケーション間の交換フォーマッ トのためにも利用している.

昨年,東京農工大学で開かれた科学技術展で,実際に使用してもらった上 で,書いてもらったアンケートでは,ほとんどの人が,「おもしろい」,「便 利である」,「今後使ってみたい」と,肯定的意見を回答していた.

Q:手書きのメールを見るのには,何か必要なのか?
A:HandsDraw に対応したビューワが必要である.
Q:インクフォーマットの「インク」とは何か?
A:手書きで書いたパタンを「インク」と呼ぶ.
Q:ドロー形式とは何か?
A:画像としてではなく,手書きで描いたストロークや直線,文字などを それぞれ一つのオブジェクトとして扱うデータ形式である.
Q:キーボードの方が速いと思うが.
A:文字だけのメールならば,キーボードの方が速い.でも,絵を入れたいときなどに, 手書きのメリットが出てくる.
Q:対象はだれなのか?初心者がターゲットなのか?
A:簡単にだれでも使えるという面では,初心者がターゲットとなる.
文字だけではなく絵が送れるという面は,今まで電子メールを使ってきた人たちも 十分にターゲットになると思う.
C:視覚障害者によいということであったが,片手が不自由な人はキーボードが 使えないので,便利かもしれない.
Q:画面の大きさに依存するのか?
A:HandsDrawでは,論理座標系(1/10point単位)を使っている. それをどう利用するかはアプリケーション側の使い方である.
Q:フォント情報は?
A:仮想フォントとして数種類提供し,それになんらかのフォントをマッピングする 形になる.
Q:文字コードは何を使っているのか?
A:HandsDraw では基本的には規定していない.ファイルに記述するときなどには, そのヘッダに,文字コードの種別を記録することになっている.
質疑応答2:


話者: 堀場一弘,小國健,中川正樹
題名: アイディアボード
概 要:
対話型電子白板システム「アイディアボード」の構成と、その上で動作するア プリケーョンについて説明した。

アイディアボードシステムは、大画面のタブレット、PC、プロジェクターか ら構成される。タブレットのサイズは約60インチ、PCは通常のWindows 95マ シン、プロジェクターは800×600ドットの液晶プロジェクターである。タブレッ トとPCとは、RS-232Cで接続されている。デバイスとして3種類のペンと1 種類のイレーサーが用意されており、アプリケーション側で使用中のデバイス が識別できる。

アイディアプログラマーは、手書きのC言語プログラムを、認識・実行できる アプリケーションである。授業での使用を想定している。文字単位の文字認識 機能のほかに、プログラム認識機能を備えており、C言語の文法知識を利用し た精度の高い認識ができる。また、各種編集機能を使って、文字単位や行単位 の編集ができる。編集中の画面はなめらかに動作するため、使用している人に も見ている人にもわかりやすい。

アイディア平祐は、手書きの数式を計算するアプリケーションである。たとえ ば「1+2×3=」と板書すると、「7」と表示される。画面の周囲にはスク ロール用の領域が設けられている。この領域でペンを押し、そのまま任意の方 向にペンを動かすことで、自由にスクロールができる。また、ボードの左に立っ ているときも右に立っているときも、スクロールさせることができる。

アイディアカレンダーとアイディアポインタは、手の動きを拡張するというイ ンターフェイスの実装例である。アイディアカレンダーでは、タイトルバーを ドラッグすることによってウィンドウが移動する。ただし、手の移動量よりも 大きく移動するとともに、ペンが指している位置とウィンドウの移動先とか直 線で結ばれる。アイディアポインタを使うと、遠くに存在するウィンドウを手 元に引き寄せることができる。アイディアポインタの上でペンを押し、そのま ま任意の方向にペンを動かすと、矢印が現れる。その矢印を目的とするウィン ドウのタイトルバー上に置き、ペンを離すと、ウィンドウが手元に移動する。 アイディアナビゲータは、いわゆるWWWブラウザである。やはり、画面の周囲 にスクロール用の領域が設けられており、立ち位置に依存しないスクロールが できる。また、手の動きを拡張したリンク先のクリック機能や、ペンを動かす 方向によってコマンドを決めるツールバーなどを備えている。

こういったさまざまなアプリケーションを作りながら、大画面システムに適し たインターフェイスや、大画面システムの用途を模索している。

質疑応答:
Q1:誤認識の恐れからジェスチャを採用しないというのに、手書き文字認識を 採用しているのはなぜか。
A1:認識という意味では両者は同じであるが、ジェスチャ認識はおもにコマン ド入力に使われるため、誤認識によるデータの消去やその他の大きなミスが発 生する恐れがある。一方、プログラム認識や数式認識は、誤認識による被害が 少ないうえに、文脈処理を使った修正もできる。われわれは、認識を否定して いるわけではなく、適切に使うことが大切であると考えている。なお、手書き 文字のデータを保存しておき、後日、デスクトップなどの別の環境で認識をか けるといったことも考えている。
Q2:RS-232Cでデータを処理しているのに、画面が高速に動作するのはなぜか。
A2:RS-232Cケーブルを通っているのは、ペンの情報(位置および種類)だけで あり、画像データなどが通っているわけではない。したがって、問題はない。
Q3:テキストボックスに手書きで文字が入力できるのか。
A3:今は実装していないが、中川研究室の文字認識エンジンを利用して実装す ることは可能である。


話者: 斎藤文彦, 加藤直樹,中川正樹
題名: リアルタイム手書きコミュニーケションシステム
概 要:
コミュニケーションの手段として手書きを用いたリアルタイムコミュニケー ションシステムについて説明した。

 本システムの設計方針としては

である。これに対し、プロトタイプ・システムでは を実現した。特に、円滑なコミュニケーションを目指すために実現した発信者の区別 では、発信したものを操作(削除、移動)できるのを発信者本人に限定した。また、 自分が発信したものを他人のものと区別ができるように、色で区別できるようにした。 プロトタイプ・システムではローカル側が黒でリモート側を青に設定した。

 操作しようとするオブジェクトの特定には囲み線による方法を採用した。こ れは線でオブジェクトを囲むことによって選択を行うものである。なお、囲み 線による選択のとき、発信者区別の機能によって他人のものは選択できないよ うにしてある。

 プロトタイプ・システムを使って、簡単な評価実験を行った。評価実験の方 法は、地図を描いて相手にある場所を伝えるというもので、評価実験の目的は、 円滑なコミュニケーションができたかどうかということである。

 アンケートの結果、回答者のほとんどが本システムを使っての意志の疎通が 可能であり、また、発信者の区別は有効であったと答えた。理由としては、

であるという意見であった。

 今後、アンケートで得られた意見を参考にしてさらなる円滑なコミュニケー ションについて研究していきたい。

質疑応答:
Q:考えている円滑なコミュニケーションとはどういうことか
A:参加者の混乱がないこと、意志の疎通が容易に行えることである。
Q:他人が発信したもの全てを同じ色で表示すると、誰が発信したか  わからなくなるので混乱するのではないか。
A:今回、自分の色を黒、相手を青、としたが、この色設定も含めて  今後の課題としたい。
Q:このシステムでは何サイトで同時にできるのか。
A:物理的にはOSの制限に依るが、実用可能かどうかということになると  5、6が適当ではないか。
Q:画面サイズが固定だと、どんどん書いていくうちにごちゃごちゃするの  ではないか。
A:全くその通りである。
Q:時間的に古いものを淡く表示していくのはどうか。
A:実験してみないとなんとも言えない。