第 321 回 PTT のお知らせ


日時:2006年 4月27日(木) 18:30 から


場所:早稲田大学理工学部 59号 4階 情報学科会議室



話者:
花岡 健介、高木 綾子、田村 真浩 (早稲田大学)


話題:
センサリッチデバイスにおけるミドルウェア開発

概要:
センサを用いた状況認識をもとにユーザにサービスを提供するには、センサデー タの解析などアプリケーションの本質であるサービス部分以外の開発に大きな手 間がかかる。そこで我々は、センサデータを抽象化し、アプリケーション開発者 の負担を軽減するミドルウェアを開発した。開発には15種類のセンサを搭載した 個人端末Muffinおよび7種類のセンサを搭載したウェアラブルデバイスCookieを 用いた。ミドルウェアは、ユーザの状況を表すコンテキストを取得するインタフェー スを、センサデータを抽象化する解析モジュール、コンテキストを管理するデー タベース、イベント通知システムの3つのコンポーネントにより提供する。本発 表では、ミドルウェア上でアプリケーションを動作させるデモを行うことでミド ルウェアの有用性について議論する。



第 321 回 PTTメモ

出席者:9名

伊知地宏(ラムダ数教研)、筧一彦(東京大)、石崎賀昭、樋口直志(NEC)、
大日向大地(富士通)、石川浩之、三浦琢磨(早稲田大)、多田好克、丸山一貴(電気通信大)


質疑応答:

【質疑応答】
Q. Cookieの駆動時間はどのぐらいなのか
A. 小さいバッテリーで約1時間、大きいバッテリーで約2時間稼動する。

Q. 「歩いている」という状態を、ベルトに装着されたセンサのみから解析できる
   のか(精度が低下しないのか)
A. ベルトに装着されたセンサの値のみの解析はもちろん可能だが、腰を動かして
   いただけでも「歩いている」と判定してしまう。そのため、他の場所(腕時計や
   ヘッドフォン)に装着されたセンサの値も用い、総合的に判断するようにしている。

Q. APIはコンテキストアウェアなアプリケーション開発において十分な機能を提供
   できているのか
A. 現在は搭載されているセンサから、取得可能なコンテキストを推測して、
   コンテキストを抽出している。そのため、十分なコンテキストを提供できていない
   こともある。今後はアプリケーションにとって必要なコンテキストをもとにWorker
   を開発していきたい。

Q. 新たなユーザコンテキストを提供するWorkerを簡単に追加できるのか
A. 簡単に追加可能な設計になっている

Q. Cookieの通信範囲はどのぐらいなのか
A. 遮蔽物などの環境に依存し異なるが、Bluetoothで通信可能な範囲が通信範囲である。

Q. アプリケーションがCinnamonからコンテキストを取得する方法は、ポーリングと
   イベントベースのどちらを採用しているのか
A. ポーリング、イベントベースの2種類のAPIを用意しているが、今回のデモは全て
   ポーリングベースで実装している。

Q. どのぐらいのデータをデータベースに貯蓄できるのか
A. 動作するWorkerの数や解析のインターバルに依存するが、最低1時間は動作すること
   を確認している。

Q. Bluetooth通信において、データ欠落は発生しないのか。環境(手などの遮蔽物)に
   よっては、発生すると思われるが
A. 私たちが想定する、「モバイル端末とユーザに装着されたセンサデバイス」という
   通信範囲内では、データ通信に支障はないと思われる。さらに、生死を問うような
   アプリケーションではない限り、データ欠落が発生しコンテキスト解析に一時的に
   問題が発生しても、アプリケーションに対し大きな影響はないと思われる。

Q. 今後、全てのセンサデータを通信したり、全てのコンテキストを蓄積することは
   コスト面から現実的ではない。必要なセンサやコンテキストを取捨択一する基準は
   あるのか
A. 現在は基準などはないため、今後の研究課題として考察する。

【コメント】
・電車内アプリケーションの場合、平日と週末のパターンを分けて観察すると有益では
  ないか

・人体のどの位置にセンサを装着すれば良いのかという指針があると良い

・センサの有効/非有効状態に応じ、コンテキスト解析workerを切り替えられると良い